ファッション業界における「サステナブル」って何?
この記事を見つけてくださった方は、
「サステナブル ファッション 意味」
とか
「エコ ファッション」「ファッション 環境 問題」
といった検索ワードで検索をされたのではないでしょうか?
2020年以降のファッション関連のトレンドキーワードを調べていると、どこを見ても必ず見つかるのが「サステナブル」という言葉です。
今や2020年以降のファッションを語る上で外せないキーワードとなりつつある「サステナブル」ですが、これって一体どういうものなんでしょうか。
「サステナブル」は、「持続可能な」という意味です。
なにやらエコな匂いがしますよね。
「サステナブル」はファッション業界におけるエコ運動・倫理運動の一つです。
ファッション業界では、大量消費、大量廃棄、大量の売れ残りなどが深刻な問題となっていて、地球環境にも経済にも悪影響を及ぼしています
(それがどれほどのものかは後程詳しく書いていきたいと思います)。
こうした問題に対する運動が「サステナブル」と呼ばれるものです。
サステナブルが馴染みのない言葉なので、単に「エコ」と呼ぶ人もいますね。
でも、エコが自然主体の環境保護運動なのに対して、サステナブルは、服を作る側が「自然界の環境を保ちながら、倫理的な範囲で使えるものは使う」というスタンスを取っているのが両者の決定的な違いです。
環境意識の先進国である欧米諸国では、売り上げの頭打ちや大量の売れ残り、イメージの悪化防止などのために、一般向けのファストファッション業界にとってもエコ化は避けては通れない問題となりつつあります(まだまだ実際の参加者は少ないですが)。
↓写真は、2019年に倒産したアメリカの大手ファッションチェーン「Forever21」の日本国内最後の閉店セールの様子。あまりにも安かったので、行ってみた人も多いんではないでしょうか?
店員さえも衣服を整えないカオスな惨状。大量生産・大量消費・大量廃棄のファストファッションの闇がそのまま表に出た出来事でした。
そしてこれがファストファッション産業の末路です。確実に時代は変わりつつあります。
こうした流れを受けてか、現在はあのUNIQLOやH&Mも具体的なサステナブルのプロジェクトを打ち出しています(後ほど紹介しますね)。
今後、日々私たちが使う服飾品の価格や、在り方そのものが変わる可能性もあるのではないでしょうか。
この記事では、ファッション産業はそんなに地球環境に悪いのか、サステナブルファッションとは何で、どんな運動なのか、サステナブルなブランドなんて本当にあるのか、といったことを知ることができます。
果たして、ファッションにおけるサステナブルとは、オーガニックバカの戯言なのか、アパレル産業の建前なのか、それとも本当に持続可能な地球環境への新たな一歩なのでしょうか。
サステナブルファッションってどんな服?
まず、日本ではサステナブル、サステナブルファッションという言葉自体が最初から一人歩きしているようなので、結局のところ何なのか分からないという意見が多いように感じます。
初めてサステナブルファッションと聞いた人は、「それってどんな見た目なのさ?」っていう疑問がまず浮かぶかと思います。エコっぽい見た目なの?って。
結論から言って、今のところサステナブルファッションにはデザイン上の特徴はありません。
レザーやファーを使わないといったくらいです。
※レザーとファーの違い:レザーがあのつるっとした「なめし革」、ファーが毛皮です。
サステナブルファッションとは、見た目の問題ではなく思想的なお話です。エコでエシカル(倫理的)な方法で作られた服を着るのがサステナブルファッション。
※ただし、2020年以降、もしもサステナブル系ファッションブランドから世界的なトレンドが発生したら、「サステナブル系ファッション」なんつって、決まったスタイルが普及する可能性があるんじゃないかと思ってます。モード系なんかもそうやって定着していったスタイルです。
ちなみにこちらが、モード系について割と革新的な記事を書いたつもりなのにまだ全然読まれてない、うちの自信作です(白目)
では話を戻して…、なぜファッション業界でサステナブルが必須課題になったのか?なぜ問題にしなければいけなかったのか?
その理由こそ、実はファッション産業が地球環境に与えるダメージが大きいことが段々知られるようになってきたからでした。次はこれについてです!
世界で二番目に地球を汚染している産業がアパレル産業。具体的には?
意外かもしれませんが、あらゆる産業の中で二番目に地球環境を汚染する産業だと言われているのがアパレル産業です(ちなみに1位は石油産業)。
国連から、産業全体が警告を受けるほどの事態となっています。
ファストファッションの需要が高まって以降、作れ作れで放ったらかしにされてきた環境への影響がようやく注目され始めたところです。
このインパクトのあるフレーズは、環境活動家やロビーイスト達のモチベーションを刺激して余りあるものでした。
それから、ファッション関連の団体からの調査報告は今まで以上に注目されるようになりました。
警告や、説教じみたことを言うつもりはないですが、知っておくことは絶対に必要ですので以下にまとめます。
※注:環境汚染の種類が多すぎて長くなってしまいました
ファッション産業だけで毎年約1億5000万本の樹木を伐採
レーヨンやアセテートなど、樹木から作られる繊維はたくさんあります。この繊維を作るために毎年1億5000万本の樹木が伐採されています。
これはファッション産業だけの数字です。他の産業の伐採量も合わせると年間1300万ヘクタール以上の森林面積が失われているそうです。
分かりませんね、ヘクタールで言われても。
森林伐採の環境破壊がひどい、なんて言われてもいまいち危機感が伝わってこないのは、ヘクタールで言われるからですよね。全部ヘクタールのせいですよね。なんでヘクタールで言うようになったん?(ひどい叩かれよう)
とにかく、1300万ヘクタールというのは、だいたい日本の総面積の1/3くらいですね。
3年も経たないうちに、日本が木一本生えてない赤土の死の国になるとご想像ください
中でも、ファッション産業が木を伐る理由は、生きるために絶対に必須のものではないですよね。それだけに叩かれる要素が多いんではないでしょうか。
毎年12億トンの温室効果ガス
マッカーサー基金による報告書「新しい繊維経済:ファッションの未来をリデザインする」(原題:"A New Textiles Economy: Redesigning fashion’s future")によると、ファッション産業は年間12億トンの温室効果ガスを排出しているとのこと。
これは日本全体が1年に排出する温室効果ガスとほぼ同じですね。一つの産業で国家規模の排ガスが出ているということです。
ちなみに中国とアメリカの排ガスは年間50億トンです。
(全国地球温暖化防止活動推進センター:世界のCO2排出量より)
1本のジーンズを作るのに、人一人の飲み水10年分
国連は、2018年3月に開催された「ファッションと持続可能な開発目標:国連の役割とは」と題した国際会議でこのような声明を出しています。
「ファッション業界が軌道修正する必要があることは明らか。全産業で2番目に多く水を消費しており、世界の排水量の20%を占める業界だ。ファストファッションによって生じた多くの緊急事態に対応するためには、サステナブルな消費の促進が不可欠だ」
「1kg、つまりジーンズ1本分の綿を生産するには1万リットル以上の水が必要となる。つまりこれは、1人分の飲み水10年分を消費することを意味する。綿花栽培は全世界で使用される殺虫剤の4分の1、農薬の11%を占める。85%の繊維は最終的に焼却されるか埋立てられる。ポリエステルやナイロンなどプラスチック製の布地を洗うと、50万メトリックトンのプラスチックのマイクロファイバーがそのまま海に流される」
との警告をファッション産業に向けて発表しました。
出典:WWD 「ジーンズ1本の綿花栽培で飲み水10年分失う」 国連がファッション業界に警告
デニム一本作るには大量の綿(コットン)が要ります。その綿はもちろん植物ですから、綿花を育てるのに水が要ります。それから、デニムの染色にももちろん水が必要です。
1本のデニムが完成するまでに必要な水は1万リットルと言われています。
もちろん、使った水は綿花や地面に吸収されたり、染色で汚染されたりで、そのまま再利用なんてできないので、完全な消費です。消費された水は戻ってきません。
1万リットルは、人間一人が10年間、一日コップ8杯の水を飲むのと同じ量だそうです。
水不足で人が死んでいくような国の人が聞いたらどんな風に思うんでしょうか。
ちなみに、「一つのモノを作るのに使われる水の総量」を「ウォーターフットプリント」といいます。ジーンズの場合、1万リットルです。スマホは910リットル。
そして車は6万リットルだそうです。ジーンズ6本分かよ!
1本1,000円~でも買えてしまう大量生産のジーンズが、6本で車以上の水消費。ちなみにTシャツは2700リットル。このことからも、服を作ることがいかに水を消費しているか分かると思います。
人類史上最大の環境破壊事件。湖がまるごと消えた
綿といえば、世界最大の綿花生産国で起こった悲劇もお伝えしておかないといけません。
綿の用途は、服以外だと漁網、テント、火薬、綿紙といったものがありますが、これらと比べると、綿花のほとんどが服の生産に充てられているのが明らかだと思います。
なので、ファッション産業が起こした事件ではないですが、無関係ではないということで取り上げます。
ウズベキスタンにある内陸湖「アラル海」は、世界第4位の面積を持つ湖ですが、20世紀末に消滅しました。
↑元は湖です
当時のソ連(ロシア)がアラル海を支配していたんですが、綿花生産を急速に推し進めるために急激な灌漑を行ったりして塩害が起こり、結局湖は干上がってしまいました。
干上がり方があまりに急速だったため、船を陸に引き上げることもできなくなり、大量の船が湖中に取り残されてしまったというわけです。
アラル海が干上がった後は、塩分や有害物質を大量に含む砂嵐が頻発するようになり、周辺住民は悪性腫瘍や結核などの呼吸器疾患を患っています。
アラルを開発してたソ連が社会主義だから、自然は「超越すべき敵」なので、自然に対する尊敬も感謝も配慮もあるわけないですよね。
当時のソビエト政府は、アラル海の惨状に対して、「アラル海はむしろ美しく死ぬべきである」なんて言ったそうですよ。
(出典:BBC NEWS)
世界4位の大きさの湖を消滅させてこの態度。これが社会主義の一面であり、人間の業とは救いがたいものです。
産業水質汚染の20%はファッション産業
まだあるの…疲れてきた。辛抱強く読んでくださっている方も、心が締め付けられるかもしくはうんざりしているのではないかと思いますが、もう少しお付き合いください…
河南省洛陽市内を流れる川。汚水処理もなにも通さずに染料が市内垂れ流しとなった。中国〇〇。
上の写真があればもう説明は要らないと思います。生活排水を除く、何らかの産業による水質汚染の20%はファッション産業によるものだといいます。多いですね。
量としては、オリンピック競技用プール200万杯分だそうです
(出典:WRI The Apparel Industry’s Environmental Impact in 6 Graphics)
だからぁ、なんでそういう微妙な例えすんねん!
この微妙な例えのせいでスゴさが薄れんねん!
分からないんで調べてみました。
オリンピックプールの容量は250万リットルだそうです。それが200万杯分なので、
染色で1年に汚染される水の量は5兆リットルってことですね
……
原因は、劣悪な生産施設で染色が行われることにより、排水がろ過処理されずそのまま河川に垂れ流しされるからです。
今後は各ブランドごとに、末端の工場に至るまで倫理監査が必須になってくると思われます。
今は海外のミレニアル世代を中心に、問題のある工場と繋がっているブランドはすぐにSNSであぶり出すというような風潮が少しずつできあがってきているようです。日本人はモノのクオリティに恵まれすぎているから、自分が使っているモノのルーツなんてなかなか興味を持たないでしょうね。
日本だけで100万トン、アメリカだけで1300万トンの服が毎年埋め立てられている
服って、その年に売れなかったものを翌年また売ることはできませんよね。
どうしてもそのシーズンごとのトレンドがありますから、来年はまた新しいものを作らなければならない。これがファッション産業特有の呪いなわけです…。
なので、売れ残ったものはリサイクルか廃棄しか選択肢がないということになります。
リサイクルというのは、服の繊維をバラしてもう一度服を作ることが一番に思い浮かぶと思います。
それ以外にも、古着屋だったりアウトレットだったり、変わったところでは、裁断してマットレスの詰め物にしたりといった方法もリサイクルに含まれます。
それでも、リサイクルできているのは、全体の売れ残りの15%程度です。
多すぎて古着屋だって貰いきれないんです。作りすぎなんです。
そして、リサイクルしきれなかった残りの85%、つまり日本で100万トン、アメリカで1300万トンの服が毎年地面に埋められることになります。
地面足りてんの?
おそらく、化学繊維だらけの服ばかりなんで何十年経っても土になんかならないでしょうね。
おまけ
この短い動画に「もったいない」という言葉の意味すべてが詰まっています
朝日新聞はでぇ嫌ぇだけど載せます
洗濯すると極小プラスチックが海に流出する。「マイクロファイバー汚染」
出典:patagonia
画像は、洗濯機でも捕えられない5㎜以下のプラスチック繊維。汚水処理工場のフィルターにも引っかからず、海まで流出してしまう。
実は、ナイロン・アクリル・ポリエステルなどでできている服を洗濯すると、極小の繊維が無数に抜け落ちています。その中でも「マイクロファイバー」と呼ばれる長さ5㎜以下の繊維は、洗濯機のネットはおろか、汚水処理工場のろ過システムさえも通り抜けてしまいます。
アパレルブランド・パタゴニアはこのマイクロファイバー問題について、資金を投資して専門家を招集し、調査研究・対策を行っています。
前から好きなブランドだったのでなんか嬉しくなったぜ。
パタゴニアとマッカーサー基金の調査によると、マイクロファイバー汚染について分かっていることは次の通り。
- マイクロプラスチック・ビーズという極小のプラスチック粒子が、化学繊維、歯磨き粉、化粧品などに含まれている
- 品質・縫製が悪い衣服ほど洗濯時のマイクロファイバーの抜けが多い
- 斜めドラム洗濯機に比べて、縦ドラム洗濯機は7倍のマイクロファイバーが出る
- 排水処理工場のフィルターは65%〜32%のマイクロファイバーはろ過できるが、残りは海や河川、湖に流出してしまう
- 衣類の洗濯により、毎年50万トンのマイクロファイバーが海に流れ出ている。これは、500億本のペットボトルと同量
- マイクロファイバー汚染による実害は今の段階では観測できていない
安かろう悪かろうの商品ほどマイクロファイバーがポロポロ落ちるってことですね。それは何となく分かります。UNIQLOのフリース大丈夫かな…もう4年着てますけど…。
洗濯機は早く斜めドラムに買い換えたいです(誰も聞いてない)。
マイクロファイバー汚染による実害ですが、なにせモノが小さいので実際の影響はまだ観測されていません。それでも毎年50万トンずつ増え、しかも海中で分解されないので増える一方です。海に泳ぎに行った人の体内や、海洋生物の体内にマイクロファイバーが入っていることは間違いないです。
ちなみに、今のままだと、2050年には海洋プラスチックごみの量が海にいる魚の良より多くなるそうです(世界経済フォーラム)。
金属の精錬による大気汚染、水質汚染、有毒物質流出
ここまで見てきたファッション産業の環境汚染といえば、生地(布)に関わるものがほとんどでしたが、サステナブルに取り組む代表的なブランド、ステラマッカートニー等は、金属の採掘による環境汚染を重要視しています。
ファッション産業でいうと、金属はベルトやバッグ、ファスナーやアクセサリーなどに使われていますね!これもやはりなくてはならない存在です。
2016年の環境損益計算書(EP&L)によると、ファッション業界が環境に与えている影響のうち、13%が金属に関するものでした。
ステラマッカートニーは、
金属の採掘による最大の悪影響は水質汚染と、それを摂取する人体への影響
と言っていますが、皆さんはこれを聞いて素直に受け入れますか?
正直に言うと、私は何で水が汚染されるのか分かりませんでした。なんで鉱山で銅とか銀とかを掘ったら水が汚染されるの?
つるはしやらショベルカーで掘って、運び出して工場に持って行くんでしょ?(あくまで勝手なイメージ) 水が何の関係があるの?
本当に何を言ってるのか意味が分からなかったけど、この場合、何も知りもしないで何となく納得する方が悪だと思ったので、金属採掘のと汚染の過程をなるべく詳しく調べてみました。
まず、銅事業会社のPAN PACIFIC COPPERの特集「銅ができるまで」によると、銅山で採掘された銅はそのまま工場に運び込まれます。
この時点で銅山周辺へのダメージは0です。その後も、工場内で何やら汚染物質が外に出ないようにうまいこと完結されているようです。
一番ヤバそうな二酸化硫黄(喘息とか気管支炎になるやつね)も、外に出さないように工場内で処理されています。
何が問題なんや。ステラさんよぉ、何でもないようなことを大げさに取り立てとっただけなんちゃうんか??
と思いかけましたが、いや待てよ…。と思い直しました。
これって、超先進国の恵まれた設備じゃないの?例えば、途上国の鉱山に「排熱ボイラー」だとか「電気集塵機」だとかいう設備があるわけがない(下に見てるんじゃなく現実問題として)。
それなら、日本にまだ何の設備もなく、産業廃棄物垂れ流しだった時代の鉱山問題を見れば、途上国の金属汚染問題が分かるんじゃない?これだ!
というわけで、日本最大の鉱山公害事件、「足尾銅山鉱毒事件」を紹介します。
足尾銅山鉱毒事件は、戦前から20世紀末まで、解決に100年以上もの時間を要した大事件です。
↑足尾銅山跡地
被害は、排煙、鉱毒ガス、鉱毒水などの有害物質の垂れ流しによる河川(渡良瀬川)と土壌(畑)と食物の汚染です。もちろん汚染された食物を食べたり空気を吸った人間への被害も甚大でした。
では、なんで石掘ったら水が汚染されてしまうのん?の答えです。
足尾銅山では、1925年までは手彫りで銅を掘っていました。しかし、1925年以降、削岩機(簡単に言うとドリルです)を使って大量に掘るようになりました。
そして、大量に掘ったら堀ったで、銅とただの岩を選り分けるのを手作業でやってなんていられない。
そこで出てきたのが「浮遊選鉱」という方法です。
簡単に言うと浮遊選鉱というのは、化学薬品入りの水に銅とただの石を放り込むと、石は沈んで銅は浮くっていうものです。
これで、一瞬で銅が手に入ると。完璧に選別できるわけではないんでしょうけど。
そして、足尾ではその廃水をそのまま川とかに捨ててやがったってことなんですよォ。ドリルで粉々に砕いた、粉末みたいになった銅が入ったやつをねッ!
(出典:星野芳郎 『足尾銅山の技術と経営の歴史』)
ということで、設備も整っていない・モラルも育っていない当時の足尾では、何の疑問もなく金属汚染物質を垂れ流していたのですが、これが今の中国や発展途上国にも当てはまります。
コンゴ共和国のコバルト鉱山、ルブンバシに暮らす住民は、体内から常人の43倍程のコバルトが検出されるそうです。生まれてくる子どもは先天異常を持った子どもばかり。
現代の話です。
伝えきれないことがたくさんありますが、以上が金属採掘による環境汚染が起こる原因でした。
ここであまり詰め込みすぎるとくどくなるのでこの辺にしておきますが(今、十分長いだろって思いましたね?)、ファッション産業による環境汚染の概要はお伝えできたんじゃないかな…と思います。
次に、じゃあこの現状に対してファッション業界はどんな対応をどの程度しているのか、といったところをご紹介したいと思います。
ファッション業界のサステナブル運動
これまで見てきたようなファッション産業の現状が段々と一般人にまで知られるようになるに従い、欧米諸国ではアパレル企業がサステナブルな取り組みをして当然、というような風潮になってきました。
アジア諸国では環境に配慮した設備が作れるほどの経済的余裕がないので、現状目立ったサステナブルな運動は起こっていない状態です。
日本人は、自分から能動的に環境問題に興味を持つような習性もなく、流行にでもならないと何も知らないので、日本では特に何も起こってません(私みたいなシケた者でも、何か大事なことを伝えることができたら本望です)。
ここでは、各アパレルブランドでサステナブルな取り組みをしている企業を紹介していきたいと思います。
UNIQLOは一早くムーブメントを察知してもう動いてましたね!さすがです
【UNIQLO】 できることから始めるサステナブル運動
- 2019年9月より順次、プラスチックのショッピングバッグを廃止、紙製に変更
- ヒートテックシャツなどのプラスチック包装を代替素材へ切り替える(現状具体案の発表無し)
- 2020年以降、ショッピングバッグ有料化を検討
- バングラデシュ、中国、ベトナムの3カ国の縫製工場の女性ワーカーのキャリア形成を支援
- ジーンズの製造工程に使用する水を90~99%削減
これらすべてが実現すると、年間7,800トンのプラスチックを削減できるそうです。
こうして見ると、害悪はほぼあのでかいプラ製ショッピングバッグだったということが分かりますね。みんなが思い浮かべるアレ。
また、アジアの縫製工場の女性職人の育成と、指導職を視野に入れたキャリア形成を支援しているということです。
東南アジア諸国の職場では、女性が指導者になるというのはまだ珍しいことのようです。女性の支援とともに、現地工場が本当に倫理基準を守って稼働しているか、内情を詳しく把握できるパイプが作れるというのはサステナビリティ的にも良いですね(←お前はサステナブル評論家か)。
ちゃんと…してるよね?内情報告してるよね?ただバカ正直に育成だけしてるんじゃないよね?世界のUNIQLO様なので、クレバーにやってくれてると信じてます!
特にバングラデシュと中国の工場なんて終わってるので、大企業になればなるほど倫理監査は必要ではないかと思われます。今なんて、たった一つのイメージダウンでその後のブランドの行く末が決まったりしますからね…
ジーンズの生産に使用する水を90~99%削減、これはすごいとしか言いようがありません。方法は書いてないので企業秘密なんでしょうか。すぐにでも全世界に普及させてほしいですが、たぶん高っかい高っかい設備が必要なんじゃないかと予想。
それに、よく見ると綿花の育成に使う水は入ってないですからね。おそらく製造工程で使う水を削減したという意味でしょうか。
なんだかんだ言っても、素晴らしい取り組みに間違いないです。あのUNIQLOが率先して動いたというのは、それだけでも大きな影響力が期待できます。
【H&M】 "サステナブルの星"
H&Mといえば、「ファストファッションの王」として、大量生産、大量消費の象徴でしたが、ここ数年はサステナブルなブランドイメージを前面に打ち出しています。
H&Mのサステナブルな取り組みについては確かに素晴らしいのですが、その裏にある矛盾した行為を知ったら、正直もうスタンスがよく分からなくなります。
まず良い方から。
革新的リサイクルの研究に投資し、サステナブル素材100%を目指す
H&Mは、廃棄物ゼロの「100%循環型のファッション業界」の実現を提唱しているそうです。
そして2018年、7億円以上の資金を投資して、香港に「コットンとポリエステル混紡布地の再再利用施設」を建設しました。
綿とポリエステルが混じった服ってものすごいたくさん見かけますよね?低価格帯のTシャツなんてほとんどそうです。
実は、綿とポリエステルの混合繊維って、品質を下げずに分解して再利用するのがめちゃくちゃ難しいんだそうです。だから、綿とポリエステルでできている服はやたら多いのにリサイクルできずに廃棄するしかなかった。そこに登場したのがこの新技術でした。
ただし、前述のとおり高額な施設なので、普及はしていません。この「コットン-ポリエステルの再利用施設」では、1日に3トンの衣類をリサイクルできるとのこと。しかし、香港だけでも1日に生産される衣類は200トンに及ぶそうです。そして、施設の建設費用は7億円。完全循環は、遠い未来の話に感じてしまうのは私だけでしょうか
次に、H&Mといえば現在、2030年までに衣類の素材を100%サステイナブルな素材に切り替えるというのがキャッチフレーズになっています。これは現在26%実現できているそうです。
何を以ってサステナブル素材なのか、H&Mの各種インタビューを読んでもはっきりしませんが、リサイクル可能な繊維、またはWWF(世界自然保護基金)が認める基準の持続利用可能な素材を使用する、ということのようです。
そして、私がちょっと良いなと思っているのが、H&Mの公式サイトの商品ページに、「製品のサステイナビリティ情報」という項目ができたこと!
一応、使用されている繊維の解説と、生産工場の住所などの情報が載っています。
日本のスーパーの「このキャベツは私たちが作りました」みたいなものですね
H&Mさん、このサステイナビリティ情報、あと一つリクエストがあります!生産工場の設備レベルと労働環境も見られるようにしてください!無茶振りだって分かってますが、もし実現したら革命的ですよね。
世の中には、強制労働者が工場で作った製品のクリスマスカードに「助けて…」ってメッセージを書いて、誰かが買って見つけてくれることを祈ってる、なんてこともあるのですから…。
次は、H&Mのよろしくない部分です。
4,500億円分売れ残り⇒19トン焼却の「ファストファッションの王」
H&Mは2013年からサステナブルを提唱していますが、それと同時に大量の売れ残りを抱えていることでも有名です。有名ですっていうか、ファッション系のプレスは一切このことを記事にしてないですけども
毎年そんなに売れ残りが出てしまう理由はいろいろな説がありますが、「作りすぎ」「セールしすぎてブランド価値が下がった」「単純に魅力がなかった」「ZARAが強すぎた」などと言われることが多いようです。
スウェーデンの放送局「SVT」の番組『Uppdrag』によると、2016年、H&Mはヴェステオース市の焼却所でおよそ19トンの衣類を焼却処分したそうです。それ以前の2013年から毎年同程度の量の衣類が焼かれているのだとか。
しかもこれはスウェーデン国内だけの数字です。
H&M側は、「化学物質が検出されたから店頭に出せなかった」とコメントしましたが、スウェーデン環境相からは「どうして売ることができないほどの高いレベルの化学物質がでるのか不思議。生産過程において大量の化学物質を使用しているということであり、問題だと思う」と返されてしまいました。
同番組内でH&MのBrannsten氏は「サステイナブルかどうかという点では、服の焼却には問題があることには同意する。企業としても対応していきたい」と答えているので、服の焼却は続けるということですね。
ここまで、一見矛盾するような二面性が垣間見えたH&Mですが、どう考えますか?
すっごく良く言うなら、「2030年には全部リサイクル可能な素材になるように頑張ってるから、焼却は無くなるよ!だから今だけちょっとうまく回ってないからごめんね☆」というところでしょうか。
厳しく言ってしまいましたが、こんな大きなモンスター企業が、利益を出しながら環境への悪影響を無くすのはかなり難しいことですよね。
まぁあの、サステナブルへの究極の答えは、「服、作るなよ」なんですが、下請け工場も含めると何百、何千万人といるH&M関連従業員たちの生活や人生が、この服作りにかかっていることも事実。今さら止まれないところまで来ているんです。
そんな中で具体的なサステナブル目標を定めて、実際に実現しようとしているのは素晴らしい試みだと思います。
まとめ
では最後にまとめです!
- ファッションにおけるサステナブルとは、「環境を壊さない程度に天然資源を取る。取ったら取った分の穴埋めをする」こと
- これからの時代、消費者は、ファッション産業が大きく環境を汚染していることを知り、サステナブルではないブランドがあれば共有して、厳しく追及し変化を求めていくことが必要
- ファッションは楽しいものだから、ガチガチの活動家にならずに、まずは今のファッションシーンやトレンドを冷静に見つめ直してみて、自分に合うファッションを探してみては
まとめはこんなところです。
現在、海外ではファッション業界のサステナブル活動に本格的に参加しているセレブはたくさんいます。エマ・ワトソン、アン・ハサウェイ、ヴィクトリア・ベッカム、ナタリー・ポートマン(レオンーーーー!)など!
日本ではまだ有名人の本格参加は聞きませんね。ローラさんがプラスチック問題について度々口にしていますが、なかなか真面目に聞いてもらえていないのは、自身がサステナブルファッションをしていないのと、サステナブルの知識面の裏付けがないからではないでしょうか。
ローラさんは実はとても素晴らしい努力家で、大きな影響力も持った方なので、ぜひサステナブルブランドを本格的に取り入れて、日本のサステナブル活動のリーダー的存在になってほしいです。
…………ワイはなんの立場なんや???日本サステナブル機構(そんなものはない)の会員か何かか???
つい熱くなって活動家っぽくなってしもたわ……まとめでも言った通り、ファッションは楽しいものだから、倫理を気にしつつも楽しく服と接することができるのが一番良いですね!
ファッション産業というのは、「実はそんなになくてもいい」産業です。石油とか電気とかとは違って、生活の利便性とは直接関係ない分野です。
そんな二次的な産業であるにも関わらず、トップクラスの汚染を出していることはもっと知られて厳しい目で見られていくべきだと思います。
パーティーで、呼ばれてもいない人が招待客にくっついて来て、一番騒いで汚して帰っていったみたいなもんです。
仮にもファッションに携わる私も、事実を知った今は絶対にサステナブルを意識していかなければいけないと思いを新たにしました。
もしここまでお読みいただいた方がいるなら、心から深くお礼申し上げます!ありがとうございました。