モード系と聞くと、どんな服装を思い浮かべるでしょうか。
「モード系」の検索順位1ケタ台のファッション系ブログやプレスでさえも、なんとなく「モード」という言葉を使っていて、何がモードなのか分からずに使っている人がとても多いようです。
この記事では、モード系ファッションの起源から、モード系とはなにか、というところを解き明かしていければ、と思います。
「モード」と「モード系」は違う。ここから誤解が始まった
「モード系のファッション」と聞くと、誰もがこういう服装を思い浮かべるんではないでしょうか。
出典:WEAR-https://wear.jp/hagiwara1211k/15465047/
出典:WEAR-https://wear.jp/gachopaaa/13641353/
これは「モード系」とは言えますが、モードではありません。
モード系というのは、ファッションの1ジャンルです。「原宿系」とか「ストリート系」とかいうのと同レベルの話です。
「"モード系"を英語で言うと?」⇒ありません。
一方、「モード」はもっとファッション全体を指す概念的な言葉です。実際、「モード」という言葉をいくら調べても、モード系ファッションの説明は出てきません。
先に「モード」という言葉があって、後から「モード系」という言葉が日本でだけ使われるようになりました。
だから「モード系」にあたる英語なんてありません。
では、次はそのモードって何?っていうところから見てみましょう。
「モード」という言葉の意味
日本語で「モード」の意味を調べると、「モード系」とごっちゃになった支離滅裂な解説しか出てこないので、英語で調べました。
Since the 1600s, people have been using it as another word for "fashionable." The French term "a la mode" literally means "in the fashion," or "fashionable,…
出典:https://www.vocabulary.com/dictionary/mode
訳
1600年代から、フランス語の「モード」という言葉は(英語圏に入ってきて)「流行の」という意味で使われている。
フランス語の「ア・ラ・モード」という言葉はそのまま「ファッションの」「流行の」を意味する
このように、元々「モード」はただ「流行の」「ファッションの」というだけの意味でした。
あの黒いダブダブのサルエルやらアシンメトリーのコートなんかはまだ全く関係ないですよね。
ちなみに、英語圏では「mode」はファッション用語としてはあまり使われていないようで、LongmanでもCambridge Dictionaryでもファッション用語としての用法は載っていません。
ちなみにmodeはもともとフランス語ですが、アメリカなどの英語圏でも、外国語がそのまま入ってきて日常的に使用されることはよくあります。英語圏でも使われる「ジャンル」も元々フランス語です。
欧米では、今でも「モード」という言葉は「ファッションの」「流行の」という意味しかありません。
欧米では全身黒の洗練された風なコーディネートを「モード系」と言ったりしません。
ではなんで黒くてダボダボとか、黒くて個性的な服とかのコーディネートを日本でだけ「モード系」なんて言うようになったんでしょうか?
モード系の起源-「黒の衝撃」
黒の衝撃なんて、なんだか厨二的な響きですが、これにはしっかりとした歴史があります。
「日本人がイメージするモード系」は、今から40年ちかく前のパリコレで起きた世界的な出来事がきっかけとなって誕生したのです。
「黒の衝撃」とは?
1980年代を代表する日本人デザイナーといえば、「Yohji Yamamoto」の山本耀司氏と、「COMME des GARCONS」の川久保玲氏です。
この二人は、1981年のパリコレクションで同時にデビューしました。
そのパリコレでの作品が当時、あまりに衝撃的だったのです。
山本耀司氏とモデル達
1980年代の欧米では黒の衣装はタブーとされており、まして全身黒というのはあり得ませんでした。
当時のCOMME des GARCONSのコレクション
この2つのブランドが黒を使用したことに対して、当時フランスを中心にかなりの批判が展開されました。
不吉だとか、不謹慎、「原爆を思い起こさせる」とまで言われたそうです。
しかし、ヨウジヤマモトとコムデギャルソンが与えた衝撃は、その程度では終わりませんでした。
その後、黒を全面に打ち出すファッションは世界的に流行することとなります。
現代では、パリコレのランウェイでの出来事が、街の若者たちのファッションにまで影響を及ぼすようなことはほとんどありませんが、当時の「黒の衝撃」の影響は計り知れないものだったということですね!
漆黒、膨らんだ大きめのシルエット(当時は体の線にぴったり沿うようなフォルムが当たり前だった)、ボロきれのように穴の空いた加工、アシンメトリー(左右非対称)なデザインが「黒の衝撃」の特徴でした。
これって、今私たちがなんとなく思い浮かべる「モード系」の雰囲気そのものじゃないですか?
1980年代当時の日本では、この「黒の衝撃」に影響を受けた若者が全身黒の服を着るのが大流行したそうです。
そういう人たちは「カラス族」なんて呼ばれていたんだとか。
く、黒い、黒すぎるッ!
この「カラス族」が、日本で「ヨウジ・コムデ的黒ずくめファッション」=後に「モード系」と呼ばれるジャンル、の基盤となったことは間違いありません。
結論とまとめ
- 「モード」と「モード系」は全然違う
- 「モード系」というジャンルは日本にしかない
- 日本でいう「モード系」の歴史は1980年代のYohji YamamotoとCOMME des GARCONSの「黒の衝撃」から始まった
- 黒、大きめのフォルム(タイトな黒もある)、ボロきれをまとったような独特のシルエット、アシンメトリー(左右非対称)なデザインが「黒の衝撃」の特徴で、現在でも「モード系」を特徴づける要素
- 日本でモード系が誕生したのは、1980年代の「カラス族」がきっかけ
- 本物のモード系を知りたい、極めたいならヨウジヤマモトとコムデギャルソンから始める。特に両社の公式インスタを見ると、「あーこれこれ!これが私が何となくイメージしてたモード系だ!」となります。
といった感じです!
こうした歴史を知らない人が、何でもかんでも「モード系」とか言ってしまうという事態が起こっている状態です。
ちょっと迷ったんですが、「モード系」で検索すると上位にあるページでもこれを分からず間違ったことを書いているようなので、ちょっと面白半分でツッコミつつ訂正していきたいと思います!
ホント蛇足なので結論で読み終えても大丈夫ですよ!笑
間違いだらけの「モード系」理解にツッコミを
「モード系」で検索すると、上位にいるような解説ページでも、モードとモード系の区別が分かっていなかったり、歴史を知らないために、「なんとなく雰囲気でモード系って言っちゃってる」のが多いので、ツッコミつつ訂正していこうかな、というおまけコーナーです。
せかくだからツッコミおじさん(適当)にお願いしようかな?(力抜きすぎ)
「流行のファッションだからモード系」は×
そやから、流行を表すのがモード系やったら、5年前のモード系の原形なんて跡形もないはずや。
せやけどやっぱりモード系のイメージは今も「黒くてアシンメトリー」のまんまや。
しやから、「最新の流行を取り入れるのがモード系です!」は、言葉の意味を「モード」とごっちゃにした間違いゆうことやな。
同じく「コンサバ系(保守的ファッション)の逆がモード系」も×。
Wikiもどうなん
モード系(モードけい)は、……具体的な形式などはなく、また同じような服装をしていても時代や集団によってモード(流行)ではなくなるため、実態の無い言葉。逆説的にモード系とくくられるような特徴であれば、既に陳腐化してモードではない可能性が高い。
でも今まで読んでくれた辛抱強い読者さんは分かってくれてる思うけど、「モード系」は昔のヨウジヤマモトとコムデギャルソンを基盤にしたもので、もう「渋谷系」とか「裏原系」みたいに概念が固定されたもんやからな。
「モード」いう言葉とは分けて考えなアカン思うでワシは!
「ハイブランドで固めたファッションがモード系」は×
たぶん、
パリコレで高級な服を見た
⇒流行の最先端=モード
⇒高級そうな服=モード
⇒(ハイブランドを見て)これってモード系じゃね?
ってことやろうな。
モードいう言葉も、もともと手軽に使えて使い勝手がいいだけに、どんどん意味が広がっていったんやろな
「海外のモード系ブランドのオススメはこちら!」なんて超×
「モノトーンならモード系」は△
とにかく無機質っぽくて、洗練されているファッションはなんとなくモード系⇒うーん…これはしゃあないな
ただし、「とにかく柄とかデザインが個性的だったらモード系」、テメーはダメだ9m。
それはただの「ハデなコーディネート」やからな。そんなん言うたら何でもモード系やんか。そこまで適当なことはさすがに言わせへん、言わせへんでぇ!
しかし、そんなにモード系の定義が広がったら、黒くてダボダボでアシメの「あの」モード系は何て呼んだらいいんや?
……以上、最後のおまけコーナーでございました。
私なりに「モード系」に対する思いを語ってみたつもりです。
最後に、間違いだらけのモード系情報がネットに溢れている中で、ハッとさせられる知見を与えてくださったブログ
⇒SUIT LABO
様に感謝です!とても知的で含蓄のある記事ばかりで、いつも感心しながら読ませていただいております。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!